大阪のブラジル伝統武術 カポエイラ・カポエラ アンゴラ・アンゴーラ教室

カポエイラの古くて新しい価値観を…

 今日、カポエイラは様々な形で人々に楽しまれています。ある人にとっては、「趣味」、ある人にとっては、「遊び、生きがい、エクササイズ」、そして、「ビジネス」など。事実、カポエイラにはこれらの要素が含まれており、それぞれの価値観に合った、カポエイラの世界が展開されています。各団体にはそれぞれの信条や信念がありますから、それぞれの尊ぶものを追究、尊重していけばよろしい。それは当道場にとっても同じで、何も我々が本物で他が偽者というつもりもありません。自他尊重が基本信条でありますし、何よりもカポエイラの世界には、何が本物で真実なのかを示す、客観的証拠や文献が少なすぎるため、これらの議論はあまり建設的でないのです。しかし、その一方で、我々は素晴らしいメストレに知己を得、非常に興味深い文献や聞き書き、体験、経験を共有する機会にも恵まれました。而して、カポエイラの価値の一片を提示するために、ABCAL日本支部の設立に至ったわけです。したがって、我々のレゾン・デートル(存在意義)は、カポエイラの、古くて新しい価値観の提示とも言えます。

カポエイラのルーツをどこに置くか

 カポエイラアンゴラの、一般的な評価とイメージは、「ゆっくり」、「低い姿勢で遊んでいるかのよう」に、集約されます。アンゴラのジョーゴそれ自体は、確かにゆっくり低い姿勢で行いますが、そもそものカポエイラには、より多くの種類のジョーゴとトーキが存在します。国内外を問わず、これまでに出会った、勉強不足のカポエイラ経験者の評価は、ほぼ一様に、「アンゴラ=ゆっくり」というイメージを口にします。
 ABCAL道場でも、もちろんゆっくりとしたアンゴラも行いますが、それは、本来のカポエイラの何十分の一でしかありません。Me.Acordeonであったか、「現在のアンゴラは、当時のものとはまったく違う。私に言わせれば、アンゴラ・コンテンポラニアだ」という言葉は、痛快に思えます。
 つまり、パスチーニャ、ビンバ以後のカポエイラの足跡をたどっているか、彼ら以前のカポエイラ、もしくは、彼ら以外のメストレの足跡をたどっているかにより、カポエイラの方向性は大きく違ってくるのです。本来のカポエイラの間口の広さは、現在の通常のカポエイラ愛好者の想像にも及ばないところでしょう。
 

入門希望者の方へ

★まれに入門希望者から、「試験のために鍛えてきました」と言われるのですが、体力テストの類は一切行いません。体力も必要なものですが、入門許可には、ほかに大切なものがあるからです。
 当道場で取り扱うビリンバウのトーキとそれに伴うジョーゴ、戦術の稽古方法は、非常に複雑で多岐に富んでいます。その複雑なコードとシステムを理解するには、体力よりも知力と好奇心なのです。

★私自身、数種の武術や武道を嗜んできましたが、よく言われるように、洗練された武術には舞踏、美術的要素が多分に包含されてきます。当道場のカポエイラもまた、そもそもは黒人奴隷達の生きる術であったため、非常に危険を伴い、攻撃的な技とジョーゴを促される面もあります。同時にその反面、技の練磨の過程で生まれた、独特のジンガの数々と、マンジンガの磨き方が存在しています。

★カポエイラには現在、さまざまなスタイルと種類があります。アンゴラの偏ったイメージを打破し、カポエイラそのものの奥深さを保護するためにも、我々の地道な活動が必要かと感じています。
 現今、youtubeなどの動画検索サイトでは、我々も用いているトーキの一部が紹介されていることがあります。しかし、それに伴うジョーゴは、これまでにも見たことがありません。著名なアンゴレイロやメストレの動画がこれだけ流出している、何でもありの状況の中で、なぜトーキに特化したジョーゴが出て来ないのか?
 アンゴレイロなら知っている、ginga perdida de Pastinhaという言葉。つまり、「失われたパスチーニャのジンガ」、という意味ですが、ほかにも「失われたもの」や「失われつつあるもの」は膨大にあるような気がします。パスチーニャが真のマンジンゲイロであったなら、彼は、彼の知る全てを後世に伝えていなかったのでは…と想像するのはいき過ぎでしょうか?

トーキ考

 カポエイラのトーキ(リズム)は、たくさん存在します。はっきりといくつあるのか答えられる人は少ないでしょう。実際には、既に忘れ去られてしまったトーキすらあります。
 ここで、あるビリンバウに関するリポートの訳文を引用してみましょう。

「このトーキに関するリストは、Regoがメストレに調査したものであるが、研究中、多くのメストレが、Regoに紹介していたトーキを弾くことができなかったのだ。なかには、長時間悩んだ挙句、最後には、どこで我々がこのリストを入手したのか聞いてくるメストレすらいたのだ。彼に告げると、彼は、知っていたが忘れてしまったと答えた。

これはおそらく事実で、メストレの多くは、もう長年活動していない人がほとんどだ。メストレの中には、このリストは誇張されていて、おそらく彼らは、口にしたトーキのほとんどを弾けないだろうというものもいた。1人のメストレは、jogo de dentroを弾いてくれたが、数年後、詳細を質すために再度訪れると、彼はそんなトーキは存在しないといった。

しかし、同じトーキが違う名前で伝承されていたり、同じトーキの名前で違うリズムであったりという点は、ままあることだ。」
 
 この論文で指摘されている点は、誤りではありません。実際にカポエイラで使われていたオリジナルのトーキは複雑で、数も現在親しまれている種類よりも、はるかに多いものです。各トーキの求めるジョーゴも、微妙に異なるだけで、素人が見れば、その違いはほとんど分からないものすらあります。現役から遠ざかってしまったメストレが、そのトーキやジョーゴのほとんどを忘れてしまうのも無理はありませんし、記録として残しておく手立てがなかったのも、遺産消滅に至った1つの理由でもあります。
 しかし、だからこそ、「保護」の観点が必要になってくるのです。
 特に現在では、各々のメストレの考え方や、取捨を経て、オリジナルのトーキの半分も聞くことすらできません。そして、より大切なのは、それぞれのトーキに伴うジョーゴも消滅しつつあることです。

 また、こんなエピソードもあります。

 あるメストレが、あるトーキを弾いていたとき、「そのトーキの名前は何というのですか?」と聞いてくる人がいました。そのメストレは、嘘をついて、実際にはそのトーキではない、異なる名前を教えたというのです。なぜこのメストレが見ず知らずの人に嘘を教えたのか、アンゴレイロなら分かりますね?
 このケースばかりではないでしょうが、トーキによって呼び名が変わったり、同じトーキの名前であってもリズムが全く違う例が見られるのは、アンゴレイロたちのマンジンガの影響なのかもしれません。

 ABCALでは、30以上のトーキの数々と、それに伴うジョーゴを稽古しています。
 参考までに、過去のメストレ、アンゴレイロが用いていたトーキを紹介しておきます。

Vicente Joaquim Ferreira Pastinha – “Mestre Pastinha”

São Bento Grande
São Bento Pequeno
Angola
Santa Maria
Cavalaria
Amazonas
Iúna


José Gabriel Góes – “Mestre Gato”

Angola
São Bento Grande
Jogo de Dentro
São Bento Pequeno
São Bento Grande de Compasso
São Bento de Dentro
Angolinha
Iúna
Cavalaria
Benguela
Santa Maria
Santa Maria Dobrada
Samba de Angola
Ijexá
Panhe Laranja no Chão Tico-Tico
Samango
Benguela Sustenida
Assalva ou Hino


Waldemar da Paixão – “Mestre Waldemar da Liberdade”

São Bento Grande
São Bento Pequeno
Benguela
Ave Maria
Santa Maria
Cavalaria
Samango
Angolinha
Gegy
Estandarte
Iúna



Francisco de Assis – “Mestre Bigodinho”

São Bento Grande
Cinco Salomão
São Bento Pequeno
Cavalaria
Jogo de Dentro
Angola
Angolinha
Santa Maria
Panhe Laranja no Chão Tico-Tico



Arnol Conceição – “Mestre Arnol”

São Bento Grande
Angola
Jogo de Dentro
Angolinha
Samba da Capoeira



João Ramos do Nascimento – “Mestre Traíra”

Santa Maria
São Bento Pequeno
São Bento Grande
Angolinha
Cavalaria
Jogo de Dentro
Angola Dobrada
Angola
Angola Pequena
Santa Maria Regional
Iúna
Guarani
Gegy-Ketu



Washington Bruno da Silva – “Mestre Canjiquinha”

Angola
Angolinha
São Bento Grande
São Bento Pequeno
Santa Maria
Ave Maria
Samango
Cavalaria
Amazonas
Angola em Gegy
São Bento Grande em Gegy
Muzenza
Jogo de Dentro
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